ボランティア保険について (2016年度版)
ボランティア保険とはいわゆるボランティア活動において負傷したり損害賠償責任を負ったりした際の備えとしてボランティア保険があります。昨今、とりわけ2011年3月11日の東日本大震災以降は、参加にあたって、ボランティア保険への加入を推奨したり義務づけたりするケースが多くなっています。 審査等もなく、安価に簡単な手続きで加入できますが、補償内容や条件、プラン等が、加入手続きをする都道府県によって異なったり、年度によって変更されたりたりするほか、大規模災害特例措置もありますので、初めて何らかのボランティア活動に参加する人も、これまで何かしらの活動に関わってきた人も、自分が参加する活動にあった加入をするともに、既に加入している人及び、団体や活動主催者も、そのプランや補償内容について確認することを、おすすめします。 2011年度のボランティア保険の加入者及び保険金支払いの増加により、2012年度には補償の減額や厳格化がみられましたが、2013年度には、補償額が以前の水準に近付いたところも見られます。依然、補償内容の見直しや運用の厳格化が見られますので、今年度以降の加入についても、補償内容の確認やプランの選択に注意してください。 ボランティア保険には主に、行事主催者がかける行事保険と、参加者個人が加入する活動保険があります。前者は主催者がその活動期間・参加者数に応じてかけるもので、参加者が特に手続きをするものではありません。参加費・手数料などとして徴収される中に保険が含まれている場合もあります。以下ここでは後者について主に述べていきます。 ボランティア保険(ボランティア活動保険)は、市区町村の社会福祉協議会で加入申し込みをします。その補償内容や条件、保険料や補償限度・対象のプラン等は都道府県単位で異なります。今年度において、プランのバリエーションが多いのは東京都で、他の道府県では、これより簡略になっています。 多くの道県では、全国社会福祉協議会を通じて扱っているため、同一の補償内容ですが、2009年から、基本プランと、地震・津波・噴火による負傷も対象とする天災プランが、各々3プランから各々2プランへと、保険料と補償額が高いプランを廃して、削減されています。東京都・宮城県・愛知県・京都府・京都市・大阪府・大阪市・兵庫県では、各都府県市の社会福祉協議会で、独自のプランを組んで、それぞれの保険会社が引き受けています。プランのバリエーションが多かったり(或いはほとんどなかったり)、保険料を低廉に抑えたりといった特徴があります。 国籍、年齢、居住地、在勤・在学地、所属・主宰する団体・グループの所在地、活動しようとする場所など、実際のところ、日本国内である限り、加入にあたっての制限はなく、補償対象の範囲も日本全国ですが、ボランティア活動をしようとする人の居住地で加入するのが基本と考えていいでしょう。 居住地で申し込んだ場合、自治体や社会福祉協議会から、保険料が補助されるところもあります。プランにかかわらず全額補助される場合もあれば、補助対象のプランや金額が限られていたり、対象者や活動の場所・目的が限られていたりする場合もあります。 活動場所を限っての補助の場合、ボランティア活動保険とは別に、自治体が主催・関係するものに公費で行事保険をかけていたり(大阪市など)、独自の保険(共済)を運営していたり(川崎市など)する場合もあり、この場合、個々の参加者や主催者が加入する保険と重複して保険金が支払われるか否かは、各々異なっているようです。 ボランティア保険の補償対象この保険の補償対象となるボランティア活動について確認しましょう。
これらのすべてに該当することが必須なのはいうまでもありませんが、あわせて、もう少し具体的にボランティア保険では除外規定を設けています。適用されない活動の主なところでは、 ・海難救助や山岳救助ボランティア活動 といったところです。もちろん、ボランティア保険の補償対象にならないものの中にも、社会的に有意義な活動があることを忘れてはなりません。このあたりは、表現が違っても、どの都道府県のボランティア保険でも共通といえます。近年ではそのさらに前提として
のいずれかに該当することが、明文化されて要求されています。 これらに該当していれば、他の都道府県であっても、複数の活動であっても、何度でも補償対象となりますが、そうでない場合、すなわち、どこの社会福祉協議会でも与り知らない活動は補償されないことになります。 社会福祉協議会が主催していたり、社会福祉協議会を通じて参加したものであれば補償対象になると考えていいでしょうが、それ以外ではどうでしょうか。参加する団体やその個別具体的な活動が「会則に則り、企画立案」されているか「社会福祉協議会の委嘱を受けた、または社会福祉協議会に届け出」たものであるかを確認することは難しいでしょう。新たに始まったものであれば、なおのことです。 そのもっとも確実で簡単な対処法は、自分で届け出ることです。何もきっちりとした会則のある団体を設立したりする必要もありません。一人でも、未定や準備中のものでも構いません。ボランティア保険の申込書に活動について記入したものが届け出たことになります。 あまり絞り込んでしまうと、それから外れたものが補償対象外になる可能性があるので、まず、当該年度中に参加・従事するであろう活動の分野や種類を、なるべく幅広く列挙し、その後に活動場所や参加行事名などを挙げ、最後に「〜など」としておくといいでしょう。 活動の分野や種類の例:福祉(高齢者・障碍者・青少年・寡婦・母子)、教育、文化、観光、芸術、スポーツ・レクリエーション推進、国際交流、保健・衛生、自然・環境保護、災害救援、地域安全、人権・平和、市民活動支援、政策提言・行政監視、男女共同参画、IT・情報・通信、雇用・労働、消費者保護… それがまず、あなたが加入するボランティア保険がカバーする範囲=社会福祉協議会に届け出た活動、となります。あわせてその範囲内で行動をともにする人がボランティア保険に入っていれば、賠償責任補償などに関しては、同じく適用されうることになり、その逆もまた然りです。どのような組織形態であれ、誰か一人でも明記して届け出ていれば、行動を同じくするボランティア保険加入者もカバーされうるわけです。 ボランティア保険の有効期間は、毎年4月1日の0時から翌年3月31日24時までです。掛け捨てとなり、自動継続はされませんから、継続して加入する場合は、毎年度、補償内容を確認し、自分の活動に適したプランを選択してください。また、年度途中に加入する場合は、加入手続を完了した翌日の0時から3月31日24時まで有効です。 申込書を記入・提出するとともに保険料を支払って加入手続き完了となりますが、保険料の支払いは、多くの場合郵便局などからの振込となります。 加入手続が完了したら、加入確認証(申込の控え)が、事故報告書の用紙とともに渡されますので、内容を確認して、大切に保管してください。申込地によっては、事故時の連絡先等を記した連絡カードが渡されますので、ボランティア活動に参加するときは携帯してください。団体・グループを通じて加入している場合、各自でそれら(コピーでも可)を受け取り、確認・保管しましょう。 ボランティア保険が適用されるのは、活動中はもちろんのこと、活動のための学習会・研修会・会議等も同様に活動とみなし、これら活動先への通常の経路による往復途上を含めてとなります。また、宿泊を伴う活動も適用されます。 そのため、実際に、活動への参加にあわせて加入する場合、出発する前日までに、事前の説明会やミーティングがある場合は、それに向かう前日までに、手続を完了しておくことが望ましいのです。活動開始とともに加入した場合、原則として、その当日については適用されません(ただし、大規模災害特例措置として、被災地の一部の県で受付されたものや、被災地での活動のために設定された保険の中には、期限付きで、加入手続き完了後直ちに有効となる場合もあります)。 ボランティア保険の大規模災害特例措置のうち、東日本大震災に関するものは2011年度中にほとんど終了しましたが、その後発生した他の地震や豪雨に関しても大規模災害特例措置が適用されている場合があります。もちろんその内容は異なります。 ボランティア保険の補償内容と条件ボランティア保険の補償内容と条件は、大枠でいうと
の2種類です。その内容について概要を改めて説明する必要はないでしょう。両者とも補償範囲や金額は、2011年まではおおむね拡大・上昇する傾向にありましたが、ここでは注意が必要なところについて触れていきます。 まず、傷害保険についてですが、死亡・後遺障害や入通院の保険金の上限額、支払い対象日数などは、もともと加入した都道府県やプランによって異なりますが、新年度になって引き下げられたり、補償範囲が狭められたりするなど、条件が厳しくなっている場合があるので注意を要します。近年では、特定感染症(東京都の低額のプランでは適用除外)や食中毒(O-157などの細菌性食中毒を含む)も補償の対象になっています。また、熱中症(日射または熱射による負傷)も、補償対象に加えるところが多くなりましたが、実際上、過失とみなされ、保険金が出なかったり、減額されたりすることが懸念されます。 ここで、基本プランと天災プランについて述べておきましょう。多くの都道府県のボランティア保険では保険料や補償額・補償対象などを複数のプランに組んでいますが、そのうち、地震・津波・噴火などによる負傷を補償対象とするものが天災プラン(天災特約)です。これらは基本プラン(通常プラン)では補償されないため、設定されています(ただし、台風等による風水害による負傷は補償対象とされていますが、地震・津波・噴火の被災地における風水害の扱いなど、補償の実態は不明です)。また、それは「傷害保険」についてのもので「賠償責任保険」までが補償対象を拡大するのではありません。被災地での活動に当たって加入を推奨されているものがこの天災プランです。おおむね基本プランの1.6〜2倍の保険料となっています。一方で給付金が2/3程度に抑えられるもの(東京都・宮城県・京都府・兵庫県)や、低額のプラン相当の特約となっているもの(大阪府)、入通院の保険金の限度日数を延長したもの(愛知県)もあります。 このほか、活動中(往復途上を含む)にボランティア保険の給付対象にならない事由で死亡した場合に給付する死亡見舞金(東京都・京都府・兵庫県)もあります。 賠償責任保険についても、注意点・相違点について述べていきます。 補償範囲が、目に見える形でなされた損害以外に及ぶものもあります。人格権侵害についての補償がそれです(東京都・宮城県・愛知県)。ボランティア活動に関して、名誉毀損やプライバシー侵害で損害賠償を求められた場合の補償で、傾聴ボランティアが道義的に求められる守秘義務を怠ったり、情報ボランティアがプライバシーや個人情報を暴露したりしたことによるものが考えられます。 ボランティアが活動中に携帯していた日常生活用品が偶然に破損した際の携帯品補償がつくもの(宮城県・京都府)、受領物品の紛失にたいする受託品補償がつくもの(京都府)もあります。 パンフレット記載の、保険金の種類・金額のほか、保険金をお支払いする場合/お支払いできない主な場合などを確認してください。故意または重大な過失・心神喪失・自殺行為によるものなど、一般的な損害保険の免責事由とあわせて、放射線被ばくによるものが補償されないなど、今般の時勢で注意すべきことも書かれています。 最後に当然のことながら、ボランティア活動には、不便や困難はもとより危険も伴います。逆に言えば、それらがないところに、活動の必要性も意義もありません。それ故に、リスクマネジメントの観点から、活動のあり方や活動に臨む姿勢などを、確認・点検する必要があります。ボランティア保険について知ることも、その一助となるでしょう。 ボランティア活動に参加するすべての皆さんが、期するところ素晴らしい成果として実現・達成されることを、そうした役立ちと学びの増進に寄与できますことを、お念じいたします。 資料:ボランティア[活動]保険の案内 2016(平成28)年度※加入に当たっては、当該都道府県の、当該年度の資料をよく読んでください。 東京都 宮城県 愛知県 京都府 大阪府 大阪市 兵庫県 上記以外の道県の社会福祉協議会→全国社会福祉協議会を通じて扱われるボランティア保険など ※pdfファイルはダウンロードしにくいところがあります。
追記筆者(当サイト This is 神戸・週末ボランティア制作者・管理人,神戸・週末ボランティア 新生/都市生活改善ボランティア主宰)は、東京都港区社会福祉協議会に都市生活改善ボランティアで登録し、天災プランBに加入しています。活動内容は以下のようにしています。 ・都市生活・まちづくり・環境・交通(特に自転車)に関する調査・提言 (2016.4.21) |