借り上げ復興住宅問題

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阪神淡路大震災の被災地で,震災以来十数年を経て持ち上がっているのが「借り上げ復興住宅」をめぐる問題だ。

借り上げ復興住宅とは

借り上げ復興住宅を含むUR賃貸住宅(手前の棟の一部):HAT神戸・脇の浜住宅大規模な災害などで住居を失った人が優先的に入居できるようにした公営住宅が復興住宅だが,公営住宅を運営する地方自治体にとっては,短期間で大量の住宅を建設しなくてはならなくなり,用地の取得・確保から建設費用など,その初期費用の捻出が大変になる。

そこで,UR都市再生機構や民間の地権者が保有・建設した住宅を,地方自治体が借り上げて公営住宅と同様にし,それに被災者を入居させたものが借り上げ復興住宅だ。

これには通常の借地借家と同様に,20年の契約期間が設定されている。借り主となる,復興住宅を運営する地方自治体にしてみれば,その期間満了までに,復興住宅としてだけでなく,通常の公営住宅としてのニーズすらもがなくなることを,見込んでいたとも言えよう。不要になれば賃貸契約を解消すればいいぐらいの認識だったのだろう。

UR賃貸住宅にしても民間賃貸住宅にしても,本来であれば公営住宅より入居者が支払うべき賃料は高くなるのが普通だ。その差額分は借り上げる主体が負担する。この逆ざやが,借り上げ住宅が続く限りのしかかってくるわけで,その解消・軽減も,自治体側の追求するところになってしまう。被災者である入居者にしてみれば,借り上げ終了後も,地権者と直接賃貸契約を結ぶことは,制度と運用としては妨げられていないが,実際はその逆ざや分の負担増が求められるため,極めて難しいものとなってしまう。

そもそもURは良質で低廉な住宅を供給することが使命だから借り上げ復興住宅の提供も当然と言うことになろうが,被災者でない一般入居者とのかねあいも問われてこよう。同じく公営住宅の入居者といっても,ニーズは異なり,建設時にいずれに対応させていたかも問われてくるところだが,実際のところ,借り上げ期限が来た後返還されたところを,一般の入居希望者で充当することに,貸し手側としてはさして苦労はないだろう。

民間地権者ではどうだろうか。自身の土地を,自分が住むとか,営業・事業に使うとか,或いは公営住宅の規格とは異なった形態での賃貸・分譲などといったような,他の用途での使用をせず,公営住宅として提供し,被災地の復興と被災者の生活再建のために貢献しようとしたもので,実際のところ,借り上げ復興住宅としての期限が来たあと返還されても,他の用途には使えず,かといって民間賃貸住宅の相場に見あった条件で,これまで住んでいた被災者と改めて賃貸契約を結ぶのは,UR賃貸住宅の場合と同様かそれ以上に困難だ。

民間地権者の多くは,その建設にあたって,公営住宅の規格で建設することを条件に公的融資を受けており,借り上げが家賃保証となって返還が可能になるのであって,借り上げ終了後明け渡されたのでは,残債の償還に行き詰まりかねない。

(2012.2.22)

借り上げ復興住宅問題

こうした情況にある借り上げ復興住宅だが,期限満了後の選択肢としては,いくつか考えられる。

居住者の選択肢と問題

多くは,現在住んでいる借り上げ復興住宅から移転するものだ。その場合の選択肢としては,
・居住者自身が移転先を確保して移転する。
・借り上げではない他の公営住宅に移転する。
が考えられるが,さすがに前者を強いることはまずいとしたのか,被災自治体においてもっとも多いパターンは後者だ。移転先を確保して費用を補助して,他の公営住宅への移動を求めるものだ。

被災者でなくても,そもそも公営住宅は,住居に困窮する者への施策という面が強いために,URであれ民間であれ,賃貸であれ持ち家であれ,移転先を見つけることは,経済的に困難,というかほとんど不可能な場合が多い。世帯主が比較的若く,収入に余裕があるなどで,公営住宅以外の住居を見つけられるのであれば,それでもいいだろうが,それが可能な世帯はごく限られている。

しかも,阪神淡路大震災から十数年を経た今,被災時から高齢であった住民はもとより,被災当時は現役世代であった人たちも高齢者の仲間入りをしている中にあっては,借り上げに限らず,復興住宅住民自体の高齢化が進んでおり,こうした高齢者及び高齢者を含む世帯では,もはや移転それ自体が困難だ。

居住者が引き続き住み続けるには,
・貸し主(URや民間)と直接賃貸契約を結ぶ。
・地方自治体が借り上げ期間を延長する。
・地方自治体が借り上げ住宅を買い取って移管し,通常の公営住宅として運営する。
などが考えられる。

コミュニティ春日野直接契約の締結を制度として阻むものはないが,居住者の現状からすればもっとも非現実的な選択肢である場合が,ほとんどすべてであることは,繰り返すまでもないだろう。

地方自治体による借り上げ期間延長や買い取りは,財政負担が大きく,多くの場合及び腰になっている。場合によっては自ら公営住宅を建設した方が安上がりになることすら考えられる。

借り上げ復興住宅の期限は,地方自治体が契約を締結してから最長20年で,概ね竣工からとなるため,個々の建物によって開始・終了時期は異なってくる。早いところでは2016年に期限がやってくる。

(2012.11.21)

借り上げ復興住宅を含むUR賃貸住宅(手前の棟の一部):
HAT神戸・脇の浜住宅 (上,2009.12.12)
民間地権者から神戸市が棟ごと借り上げた借り上げ復興住宅:
コミュニティ春日野(右,2008.4.27)

被災者−住民の声

そうした期限が差し迫ってくる中,借り上げ復興住宅の解消を図りたい地方自治体に対し,引き続き住み続けたい住民の声は切実さを増している。

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